災害とカルテ

2026.10.24 RCCラジオ出演

RCCラジオ「週末ナチュラリスト」

放送日:2026年10月24日 (土)


PodCastで聴く

過去放送分はリンク切れの場合があります

岡 佳奈

パーソナリティ
岡 佳奈さん

菅野 陽一郎

レスコ出演者
菅野 陽一郎

災害時における医療情報と電子カルテの現状

菅野

今年も1月には島根、6月には岩手・山梨で地震があるなど、災害が相次いでいます。そうした中で、災害時のカルテの扱いにも変化が見られています。国はクラウドネイティブカルテを推進していますが、これは災害時の医療情報のあり方にも関わってきます。

岡

災害時にはどのような効果や変化があるのでしょうか。電子カルテについて、国はどのように変えようとしているのですか。

菅野

災害時には、けがをした方の情報をいち早く確認したい場面がありますが、これまでの仕組みでは対応しきれない面がありました。また、オンプレミス型(院内にサーバーを設置する方式)のシステムでは、そもそも電源が供給できなければカルテを閲覧できません。

菅野

そこで国は、災害現場や平時の救急の場面で、マイナ保険証などを通じて患者さんのアレルギーや服用中の薬を確認できる仕組みづくりを進めています。電子カルテもクラウド化することで、必要なときに必要な情報を確認できるようにしていく。それは私たち自身を守ることにもつながりますし、支援にあたる方々にも必要な情報が行き届くことになると考えています。

災害支援の現場で直面した情報運用の課題(DPATの事例)

岡

実際の災害支援現場ではどのような運用が行われているのでしょうか。

菅野

日頃からお世話になっている瀬野川病院のDPAT(災害派遣精神医療チーム)が、今回の熊本の震災で現地に入られた際のお話を伺いました。建物が被災した病院の入院患者さんを、通常どおり運用している他の医療機関へ転院搬送し、建物の修繕や電源の復旧後に元の病院へ戻す、という支援を担当されたそうです。

岡

具体的にはどのような対応をされたのですか。

菅野

搬送の際、道は通常よりも大幅に混雑しており、時期も夏の非常に暑い頃でした。対象は70代から90代を超える高齢の患者さんです。本来であれば、点滴を続けながらの搬送が必要か、自力で歩けるか、心臓などに疾患がないかといった点を把握しておきたいところですが、カルテの情報がありませんでした。事前に伝えられていたのは「氏名・年齢・性別・移動手段・入院形態」の5項目のみだったそうです。

岡

情報が限られている状態での搬送は、非常に大変ですね。

菅野

そのため、DPATの医師や看護師が搬送前に一人ひとりを診察し、仮説を立てながら細心の注意を払って、1時間近くの搬送に対応されました。震災直後は電源の復旧に時間がかかり、キャリア回線も不安定になります。電子カルテであっても、なかなか開けない状況があったということです。

個人でできる災害時への「備え」と通信手段の確保

岡

デジタルの環境を整えることと同時に、アナログな備えも強化していく必要があると感じます。私たちが一人ひとり、病歴やお薬について災害時に備えておけることには何があるでしょうか。

菅野

一つは「マイナ保険証」の携帯です(スマートフォンでも利用できます)。今年から、緊急時には救急隊が情報を読み取り、状態を確認できる仕組みが始まっています。通信ができる状況であれば、疾患情報などを確認してもらうことができます。

岡

通信障害への対策としてはどのような選択肢がありますか。

菅野

最近CMでも見かける「Starlink Direct」のような衛星通信サービスも選択肢の一つです。電波が届かない場所でも、通信速度は落ちますが、テキスト情報の送受信などに使えます。熊本の震災以降、契約が3倍ほどに増えているとも聞きます。キャリアによっては個人向けに無償で使えるケースもあるので、平時のうちに切り替えの手段を確認しておくと、家族間の連絡などにも役立ちます。

岡

連絡手段を確保し、自分や家族のことを伝えられるようにしておく。日頃からの備えが大切ですね。

関連キーワード

  • クラウドネイティブカルテ

    院内サーバー型ではなく、クラウド環境を前提に構築・運用される電子カルテシステム。院内設備が被災した場合でも、データにアクセスできる手段の確保や、関係者間での情報共有に役立つことが期待されている。

  • DPAT(災害派遣精神医療チーム)

    自然災害や大規模事件・事故などの発生時に、被災地域へ派遣され、精神科医療の提供や被災者の専門的な心のケアを行う医療チーム。

  • Starlink Direct(衛星通信)

    人工衛星を経由して通信を行う仕組み。地上の基地局などが被災して通常の回線が使えない場合でも、テキストの送受信など、連絡手段の一つとして活用できる場合がある。

こちらの情報もおすすめ