以前、電子カルテに関する国の認証制度(お墨付き)についてお話ししましたが、医療DXやデジタル化に向けた予算措置が「骨太の方針」に盛り込まれました。そして8月には厚生労働省から医療デジタル化に関する予算申請(概算要求)が出され、9月9日には「電子カルテ普及計画」が発表されました。
「普及計画」というと、まるで一大作戦のような規模感ですね。内容としては具体的にどのようなことが進められているのでしょうか?
今年度これまでお伝えしてきた取り組みが、国の予算として本格的に動き出します。医療DX・サイバーセキュリティ関連の要求額は総額で2,561億円にのぼります。昨年度が約14億円程度でしたので、桁違いの予算枠となっています。
14億円から2,561億円というのはすごい大幅増ですね。国の本気度が伺えますが、内訳はどのようになっているのでしょうか?
電子カルテの普及支援には604億円が充てられています。認証を受けたクラウド型電子カルテを医療機関が導入する際、費用の半額を国が補助する仕組みです。また、既存の電子カルテから認証済みカルテへデータを「引っ越し」する費用についても半額補助の対象となっています。
データの引っ越しというのは具体的にどのような作業になるのでしょうか?
実は「データ引っ越し」の定義自体はまだ明確に定まっていません。従来は個々の病院が独自の方言(独自形式)でデータ管理をしていたものを、共通のルールやフォーマットに標準化して移行していくイメージです。費用負担のあり方も含め、今後の議論が必要です。
導入コストや規模の面でも、医療機関ごとに違いがありそうですね。
現在のお墨付きクラウド電子カルテの導入実績を見ると、総額1億円程度かかるケースもあり、半額補助があっても病院にとっては高額です。家電製品のように普及と低価格化が進むことが理想ですが、病院の規模や状況に応じた支援が求められます。
具体的にはどのようなスケジュールで進んでいくのでしょうか?
認証制度自体は今年の年末にかけて開始され、年明けから来春にかけてお墨付きを得た電子カルテが順次発表される見通しです。それに伴い補助金の活用も本格化します。
現在の電子カルテ普及率はどの程度なのですか?
大型病院で約9割、中小病院で約7割です。ただし、すでに導入済みの病院も認証済みカルテへ移行する必要があるため、全国数千の医療機関が今後どのように切り替えを行うかが大きな課題となります。
2030年に向けた目標設定もありますが、すべての病院が一律に移行するのは簡単ではないですよね。
高齢の医師が運営する診療所や、既存システムが高機能すぎて簡単には切り替えられない大病院など、事情は様々です。そのため、紙カルテ運用を維持しつつ最低限の医療DXに対応する場合の補助や、大病院のシステム再構築に対する開発費支援など、柔軟な取り組みが用意されています。
デジタル化が進む中で、セキュリティ対策も重要なテーマになりますね。
医療分野のサイバーセキュリティ専門人材は不足しています。今回の予算には専門人材の育成やランサムウェア攻撃に対する訓練、緊急時の初動対応体制の構築などへの投資も組み込まれています。
業務効率化やセキュリティ面でAIの活用も期待されるのでしょうか?
医療現場は間接事務作業が多いため、医療スタッフが本来の医療行為に集中できるよう、AI秘書などの事務軽減ツール導入への補助も用意されています。
予算面やシステム整備が進む一方で、課題はまだありますか?
もう一つの大きな課題は、導入作業を担う「専門人材の不足」です。医療知識とデジタル技術を併せ持った人材が不足しており、現場への設置や設定を行う担い手が足りていません。
最終的な運用や導入の場面では、やはり人間によるサポートが欠かせないのですね。
いわゆる「ラストワンマイル」を支えるのは人です。技術やAIが進化するからこそ、人間が適切にコントロールし、使いこなしていく姿勢が重要になります。
厚生労働省が医療DXの推進に向けて策定した、医療機関における電子カルテの導入・標準化およびクラウド移行を促進するための計画方針。
国が定めたセキュリティや標準規格などの条件を満たしたクラウド型電子カルテシステム。認証を受けたシステムに対して国の補助金が優先的に導入・移行支援されます。
医療分野のデジタル変革とセキュリティ強化のために申請された概算要求予算。ランサムウェア対策やAI秘書機能、専門人材育成などの支援が含まれます。
システムや技術を最終的に利用者の現場へ届け、定着・運用させる最後のプロセスのこと。医療現場においてはデジタル技術の導入を直接サポートする人材やコミュニケーションの重要性を指します。